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2025/3/24

日立製作所が GitHub Copilot の活用で開発生産性を向上。社内評価、開発フレームワークとの連携、コミュニティ活動を通して、さらなる生成 AI 活用を推進

2023 年 5 月に「Generative AIセンター」を設置し、社内外への生成 AI の利活用に取り組んでいる日立製作所。その中で、システム開発領域における利活用の一環として行われているのが、GitHub Copilot の活用です。同社では、ベンダー ロックインを回避できグローバル スタンダードになり得る開発ツールの 1 つとして、2021 年から GitHub を活用していますが、その延長として GitHub Copilot による開発生産性向上に取り組んでいます。

まず 2023 年 10 月に GitHub Copilot 活用の効果に関する社内評価をスタート。また GitHub Copilot 単体だけではなく、日立製作所が既に持っている開発フレームワークと連携させた活用も行われています。さらに、これらの取り組みで得られたナレッジを蓄積および共有するため、2024 年 4 月に「生成AI実務者コミュニティ」を発足。生成 AI 活用の「拡大」だけではなく「定着度」を強く意識した活動が展開されています。

社内評価では「タスクを迅速に完了できる」が 83% に上るなど、高い評価を受けているのに加えて、実際に生産性が 30% 向上したケースも登場しています。また開発フレームワークとの連携では、業務ロジックのコード生成率が ルールベースのみの78% から GitHub Copilotの併用で99% へと向上した例もあります。コミュニティ活動では、ナレッジの審査/承認/発信を行うモデレーターを置くことでナレッジの品質担保と体系化を実現。生成 AI 活用の定着度向上に貢献しています。

 

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システム開発の生産性向上に貢献するため、GitHub Copilot の活用ナレッジを蓄積

1910 年の創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念の下、顧客と社会に貢献する事業を展開し続けてきた株式会社 日立製作所 (以下、日立製作所)。近年は最新の IT × OT ×プロダクトを組み合わせて社会課題を解決する「社会イノベーション事業」を通じて、持続可能な社会と人々の幸せの実現に挑戦しています。また生成 AI の活用や、これによる新たな価値創出も積極的に推進。2023 年 5 月には「Generative AIセンター」を設置し、Investor Dayにおいて「システム開発の生産性を 2027 年までに 30% 向上させる」と公表したことも、大きな注目を集めています。

このような生成 AI への取り組みの一環として行われているのが、GitHub Copilot の活用です。

「日立製作所では生成 AI に関するさまざまなユースケースを蓄積および共有していますが、その 1 つのテーマにシステム開発の効率化があります」と説明するのは、日立製作所 アプリケーションサービス事業部 Lumada共通技術開発本部 LSH事業推進センタでセンタ長を務める斎藤 岳 氏。そのための重要なツールの 1 つとして、 GitHub Copilot を選択しているのだと語ります。

「日立製作所には独自の開発メソッドやツールもありますが、お客様にとってはベンダー ロックインを回避できる方法も必要です。そのための最も有力なものの 1 つが、グローバル スタンダードになり得る GitHub だと考えています」。

このような理由から、日立製作所では 2021 年に GitHub の社内向け提供サービスを本格展開開始。まずはエンタープライズ サーバーを利用する特定顧客のユースケースで活用を開始、その後はクラウドにも適用領域を拡大しています。GitHub Copilot の活用は、その延長線上に位置付けられるものなのです。

溝江 彰人 氏, アプリケーションサービス事業部 LSH事業推進センタ 担当部長, 株式会社 日立製作所

“このアンケート調査では 6 項目の指標で評価してもらいましたが、そのうち 5 項目で 70% 以上の高い評価となり、『タスクを迅速に完了できる』では 83% に上りました。その理由としては、コメントからのコード生成やコードからのコメント/テストコード生成が自動化できる、型定義宣言や関数名/変数名が提案される、などが挙げられています”

溝江 彰人 氏, アプリケーションサービス事業部 LSH事業推進センタ 担当部長, 株式会社 日立製作所

83% が「タスクを迅速に完了できる」と評価、生産性を 30% 高めたケースも

この取り組みについて「2023 年 10 月には GitHub Copilot の社内評価をスタートしています」と語るのは、日立製作所アプリケーションサービス事業部 Lumada共通技術開発本部 LSH事業推進センタで担当部長を務める溝江 彰人 氏。約 200 名のユーザーを社内公募し、3 ~ 4 か月かけて評価を実施、この間に 2 回のアンケート調査を行い、GitHub Copilot の効果を評価しているのだと説明します。

アンケート調査の手法としては、GitHub 社やビクトリア大学、Microsoft Research のメンバーが提唱する「SPACE フレームワーク」を採用。これは複数の指標を組み合わせたアンケートを行うことで、開発者の生産性を多角的に評価するためのフレームワークです。

「このアンケート調査では 6 項目の指標で評価してもらいましたが、そのうち 5 項目で 70% 以上の高い評価となり、『タスクを迅速に完了できる』では 83% に上りました。その理由としては、コメントからのコード生成やコードからのコメント/テストコード生成が自動化できる、型定義宣言や関数名/変数名が提案される、などが挙げられています」 (溝江 氏)。

現時点での GitHub Copilot の用途としては、コーディングと単体テストが多いと溝江 氏。この領域では平均で 10 ~ 20%、ケースによっては 30% の生産性向上効果が得られていると言います。コーディングの際、最初の枠組みを作成することは大変な作業であり、心理的負荷もかかります。しかし、この部分を GitHub Copilot が肩代わりしてくれることが大きいと語ります。

また、コーディングは 1 人で取り組むことが多く、孤独な作業になりがちですが、GitHub Copilot が常に横にいてサポートしてくれることも、開発者の心理的負担を軽減していると言います。

その一方で、「新しい言語を学ぶ時にも役立つ」という声も上がっています。

「日立製作所には業務内容は詳細まで熟知しているものの、新しい開発言語には詳しくないという設計者も少なくありません」と言うのは、日立製作所 アプリケーションサービス事業部 Lumada共通技術開発本部 生成AI技術開発部で部長を務める五十嵐 聡 氏。最近では COBOL から Java への移行や、生成 AI 活用のために Python を使うことが増えていますが、これらの言語を学習する際に GitHub Copilot が強力なパートナーになってくれるのです。「これとは逆に COBOL を知らなかった開発者が、GitHub Copilot で COBOL を覚えたケースもあります」。

この評価期間中に GitHub Copilot のユーザーは急速に増加しており、現在のユーザー数は約 2,000 名に上っています。これを 5,000 名にまで増やすことが当面の目標だと、溝江 氏は語ります。

五十嵐 聡 氏, アプリケーションサービス事業部 生成AI技術開発部 部長 (GenAIアンバサダー), 株式会社 日立製作所

“手作業でコーディングしていた部分にGitHub Copilot を活用すれば、詳細設計書には「こんな処理をやるよ」という内容を記載しておくことでJustwareの骨格コードと組み合わせて業務ロジックを提案してくれます。実際にコード生成率は、当社の検証用アプリケーションにおいて、Justware OSS ベースだけでは 78% でしたが、GitHub Copilot の併用で 99% にまで向上しています”

五十嵐 聡 氏, アプリケーションサービス事業部 生成AI技術開発部 部長 (GenAIアンバサダー), 株式会社 日立製作所

日立独自の開発フレームワークと連携させ、コード生成率を高める取り組みも

このように GitHub Copilot の評価と活用を着実に進めている日立製作所ですが、日立製作所の既存の開発フレームワークとの連携も進められています。その 1 つが「日立アプリケーションフレームワーク Justware OSS ベース (以下、Justware OSS ベース)」と組み合わせた活用です。

「前述のように GitHub Copilot 単体の活用はペアプログラミングでのコーディングや単体テスト支援が中心ですが、開発統制を図るJustware OSS ベースと組み合わせることで大規模システムの開発効率をさらに向上させてくれます」と五十嵐 氏。Justware OSSベースでは詳細設計からルールベースで統制の取れた骨格となるコードを生成することができると語ります。「しかし、複雑な業務ロジックについてはルールベースで生成できないため、詳細設計書に処理を細かく記載し、開発者はその内容をもとに手作業で一からコーディングをする必要があります。ここの負荷軽減・効率化が課題でした」。

この課題を解消するために進められているのが、Justware OSS ベースが生成したソースコードをベースに、開発者が GitHub Copilot を活用してコードの精度を高めていく、という取り組みです。その中でも特に注力されているのが、業務ロジックの生成だと五十嵐 氏は説明します。

「手作業でコーディングしていた部分にGitHub Copilot を活用すれば、詳細設計書には『こんな処理をやるよ』という内容を記載しておくことで、Justwareの骨格コードと組み合わせて業務ロジックを提案してくれます。実際に、当社の検証用アプリケーションにおけるコード生成率は、Justware OSS ベースだけでは 78% でしたが、GitHub Copilot の併用で 99% にまで向上しています」。

これに加えて、2024 年 5 月に提供を開始している「Hitachi GenAI System Development Framework」との組み合わせも行われています。このフレームワークは、要件定義や基本設計といった上流工程から、結合テスト、システム テストまでをカバーしています。コーディングにおいては、詳細設計書からプロンプトを自動生成し、これによって生成 AI でのコード生成を行うというものです。その結果を「初稿」とみなし、GitHub Copilot の活用でその精度を高めることが目指されています。

「日立製作所はミッションクリティカルなプロジェクトが多いため、開発手法もウォーターフォール型が多いのですが、最近ではスピーディーなプロトタイプ開発やアジャイル開発が求められるケースも増えています。プロジェクトの性質によってGitHub Copilotでの支援や日立のフレームワークとの組み合わせを使い分けることで、開発の間口がさらに広がると考えています」 (五十嵐 氏)。

斎藤 岳 氏, アプリケーションサービス事業部 LSH事業推進センタ センタ長 (GenAIアンバサダー), 株式会社 日立製作所

“コミュニティの目的はナレッジのオーナーとユーザーのコラボレーションを促進することですが、両者の間にモデレーターを置いていることが最大の特徴です。モデレーターがナレッジの審査/承認/発信を担当することで、ナレッジの品質担保と体系化を可能にしているのです。日立内で共有されているユースケースは 1,000 件を超えていますが、これらを 200 程度のナレッジに体系化しています”

斎藤 岳 氏, アプリケーションサービス事業部 LSH事業推進センタ センタ長 (GenAIアンバサダー), 株式会社 日立製作所

モデレーターが参加するコミュニティで「定着度」を意識したナレッジ共有を推進

日立製作所における GitHub Copilot 活用でもう 1 つ見逃せないのが、ナレッジ共有のためのコミュニティ活動も積極的に進められていることです。

「ナレッジ共有の取り組みはさまざまな領域で行われており、生成 AI に関しても 2023 年には有志メンバーによるコミュニティ活動が始まっていました」と斎藤 氏。2024 年 4 月にはこれを体系化した「生成AI 実務者コミュニティ」が、正式に立ち上げられたと振り返ります。

ここでまず注目したいのが、コミュニティの運営体制です。これについて斎藤 氏は次のように説明します。

「コミュニティの目的はナレッジのオーナーとユーザーのコラボレーションを促進することですが、両者の間にモデレーターを置いていることが最大の特徴です。モデレーターがナレッジの審査/承認/発信を担当することで、ナレッジの品質担保と体系化を可能にしているのです。日立内で共有されているユースケースは 1,000 件を超えていますが、これらを 200 程度のナレッジに体系化しています」。

これに加えて、単に生成 AI の活用を拡大するだけではなく、その「定着化」を強く意識していることも、重要なポイントだと言えるでしょう。

「定着化の KPI は大きく 2 つ設定してあります」と斎藤 氏。1 つはコアなアクティブ ユーザー数です。現在のコミュニティ参加者数は約 1 万 5,000 名。そのうちコアなアクティブ ユーザー数は 2,500 名程度であり、これを 6,000 名にまで引き上げていくことが目指されています。

もう 1 つの KPI は「貢献度」です。日立製作所では社内のさまざまな活動が収益にどのような貢献を果たしているのかを定量評価していますが、その数値を高めていくことも目指しています。

今後は 開発の効率化にプラスしてDevSecOpsの強化軸という意味でもGitHub Copilot を GitHub Advanced Security と組み合わせ、脆弱性を早い段階でチェックすることで、詳細設計の段階からセキュリティを組み込んでいく、といった取り組みも検討しています。このようなプロセスが追加されれば、内閣サイバー セキュリティ センター (NISC) が定義する「セキュア・バイ・デザイン」も、より高いレベルで実現できるようになるでしょう。

「近い将来には開発業務で利用できる AI エージェントがさらに増え、マイクロソフトが提唱する『Agentic World』へと進んでいくはずです」と五十嵐氏。「その業務適用やナレッジ蓄積も、マイクロソフトと共に取り組んでいきたいと考えています」。

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