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2025/04/23

「変革 2027」実現に向け DX を加速する JR 東日本。Microsoft Unified のトレーニングを受けた「DX プロ」がデジタル人材 3 万人を育成

労働人口減少の中、JR 東日本は社会基盤を維持し、トッププライオリティの「安全」とグループ経営ビジョン「変革 2027」の実現に向けて DX を加速させている。ポイントは、社員一人ひとりが DX を推進し、業務効率はもとより生産性や創造性を向上させていくこと。そのために、デジタル人材 3 万人の育成を目指す。

JR 東日本では、全社員が Microsoft 365 のライセンスを持つ。それを使いこなすことが、「全社員が主役の DX」には欠かせない。Microsoft Unified のトレーニングによりスキルと教え方を学んだ「DX プロ」が、全社横断的にアプリ開発と活用の普及に取り組む。

DX プロの活動により、ベーシック人材を 2.5 万人、ミドル人材を 5,000 人、合計 3 万人のデジタル人材の育成に取組む。共通プログラムとハンズオンで各部門や社員のレベルに合わせたトレーニングを実施し、業務効率化はもとより社員の成長、活力ある職場づくりに貢献。

East Japan Railway Company

各機関における DX 推進の牽引役である「DX プロ」により 3 万人のデジタル人材を育成

社会構造の変化、価値観の多様化、技術革新など、時代の変化に伴い重要インフラの鉄道も変革が求められています。JR 東日本は、2018 年に掲げたグループ経営ビジョン「変革 2027」の中で、「鉄道のインフラ等を起点としたサービス提供」から、「ヒト(すべての人)の生活における『豊かさ』を起点とした社会への新たな価値提供」へと“価値創造ストーリー”の転換を基本方針として掲げました。「変革 2027」の実現に向けた取組みの一つとして、JR 東日本は DX を加速しています。

「JR 東日本の DX 活動の中心は、全社員です。」理由について、JR 東日本 イノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット マネージャー 大野 誠一郎 氏は話します。「鉄道は労働力集約型の事業です。労働人口が減少する中、トッププライオリティである『安全』の確保を大前提にしながら、さまざまな職場における効率的な業務運営を目指して DX を推進しています。DX というと一部の IT が得意な社員だけが取り組むものと思われがちですが、大事なのは『全社員が主役となる DX』を実現すること。傍観者ではなく、一人ひとりが自分の役割や知識レベルに応じて DX を進めることで生産性、創造性を最大化することが重要だと思います」

JR 東日本は、KPI(重要業績評価指標) として、2027 年度末までに 3 万人のデジタル人材育成を定め、取り組みを進めてきました。デジタルツールやデータを業務に活用できる「ベーシック人材」を 2.5 万人、ノーコード・ローコードのアプリ開発スキルにより業務課題を解決できる「ミドル人材」を 5,000 人、合わせて 3 万人のデジタル人材の育成です。「計画より速いスピードで育成が進んでいます。 まさにDX プロの活躍があればこそだと思っています」(大野氏)

DX プロは、各機関において DX 推進を牽引する専任の社員です。2023 年 11 月に、JR 東日本の営業エリア 12 本部・支社、東京建設 PMO、電気 SIO、東北建設 PMO、新幹線統括本部、エネルギー企画部に対し DX プロ約 40 人が配置されました。「従来、社員のための、社員によるデジタル人材育成という試みは、一部の支社で独自におこなわれていましたが、DX 推進の重要性が高まる中、全社的に取り組んでいくために『DX プロ』体制を構築しました。DX プロは、さまざまな職場を巡回し、DX 推進に関する相談対応やアドバイスをおこなっています。大事なのは、各職場を中心とした『草の根活動』であるという点です」(大野氏)

DX プロが発足し、最初におこなったのが 2 週間の研修でした。「前半は、DX プロとしてのマインドセット、後半はコミュニケーションスキルや人に教えるスキルを学ぶ講習を実施しました」とイノベーション戦略本部 デジタルストラテジー推進ユニット 鳥羽 政文 氏は話します。研修を受けた東北本部 DX プロの三浦 翔也 氏は振り返ります。「『DX プロとして何をやるべきなのか、みんなで考えよう』から始まりました。デザイン シンキング的手法で課題を抽出、共有し考えを深めていきました。また DX プロが連携して課題を解決するための取り組みであるワーキング グループの活動もスタートさせました。各機関で活動する DX プロのコミュニティ形成の場となり、連携し助け合う同志としての意識も醸成されたと思っています」

共通プログラムとハンズオンでレベルに合わせたトレーニングを実施

JR 東日本では、全社員が Microsoft 365 のライセンスを持っています。同社において、デジタルに関する共通言語は Microsoft 365 です。DX プロの役割は、社員一人ひとりが Microsoft 365 を使いこなせるように、教育・トレーニングをおこなうこと。業務に役立つと実感し、自ら積極的にスキルアップに取り組むモチベーションを高めてもらうことがポイントとなります。具体的な活動について、首都圏本部 DX プロ 安部 健司 氏は話します。

「ベーシック人材育成は、デジタル ツールに関心を持ってもらうために、本社主導で全社員共通カリキュラムとして Word・Excel・Power Point のトレーニング動画視聴によって認定する共通プログラムを実施しました。ミドル人材育成では、ノーコード・ローコード業務アプリ開発ツール Microsoft Power Platform を使ってアプリ開発の基礎を学ぶハンズオン トレーニングを DX プロが中心となって定期的におこなっています」

秋田支社 DX プロ安藤 郁美 氏は、「支社ごとにハンズオン トレーニングに特徴が出てきたと思っています」と話し、こう続けます。「秋田支社では職場の課題を事前に聞いて、それをハンズオン トレーニング内で解決できるようにしています。参加した社員が、アプリやフローを自分の職場用としてすぐに運用できる形を目指しています。そうしてできたアプリやフローを見て、『自分の職場でもやってみたい』と声をかけてくれる職場もあります。秋田支社のすべての職場に一度は足を運び、ハンズオン トレーニングを通して職場の課題解決を進めています」

ミドル人材に求められるスキルは、自分たちの職場で使えるアプリ開発です。「東北本部では、ハンズオンだけでなく、個別相談にも応えています。その人のスキルによって一緒に作る場合もあります。すぐに改善すべき課題に対してはアプリを DX プロが開発し、内容やカスタマイズ方法を説明するといった方法をとっています。今、大切にしているのは『アプリって便利だな』と思ってもらい、成功体験を増やすことです」(三浦氏)

ミドル人材が開発したアプリを使って職場の社員が業務改善を図る施策も必要です。「このアプリを使ってこれだけ時間を生み出したということを、各職場や個人が計算し報告してもらっています。ユーザーは効果を数字で確認できます。また開発者にはインセンティブとして自由に使える予算を提供し、モチベーション向上を図っています」と、横浜支社 DX プロ飯山 直樹 氏は話します。

Microsoft Unified からスキルと教え方を学ぶ

各本部・支社、各機関において、DX プロの認知をいかに広めていくか。DX プロの地道な活動と上層部による支援の両輪が必要でした。「イノベーション戦略本部の役員と私とで、全機関幹部に対し DX プロの役割を説明しながら、『DX プロをよろしくお願いします』と挨拶にまわりました。同時並行で、DX プロ自身は『ぜひ相談してください』と各職場を巡回しました。各機関長の後押しと、草の根活動の両方が重なることで功を奏したと思っています」(大野氏)。三浦氏は、「人と人のつながりが大切です。顏を知ってもらうことから DX プロの活動は始まると考えています」と話します。

2024 年度から、「各職場と連携して取り組みを進めていくためにカウンターパートなる社員が必要だ」という DX プロの要望から各職場 に DX 推進エバンジェリストが設置されました。現職と兼任となる DX 推進エバンジェリストは、ハンズオンや勉強会への参加など、DX に対する社員の行動や意識を変える役割を担っています。各職場の社員への“声掛け”などは、各職場で共に仕事をしているエバンジェリストだからこそできることです。

2024 年度には、Microsoft Unified を利用し、DX プロ自身のスキルアップを目的とする研修を実施。理由について鳥羽氏は説明します。「全社員のデジタルにおける共通言語である Microsoft 365 活用が取り組みを進める上での最初のステップとなるため、本家本元のマイクロソフトに教えてもらって正しく理解することが一番良いと判断しました。DX プロに対し必要な知識やスキルに関するアンケートをおこない、その結果を受けて Microsoft Unified はトレーニング内容を組み立ててくれました」

Microsoft Unified は、鳥羽氏と綿密に打合せ、DX プロ向けのワークショップ / ハンズオンセミナーを含む、2 日間に渡る計 3 回の集合研修を 2024 年 7 月から同年 11 月にかけて実施。準備期間を入れると半年に及ぶトレーニングプログラムとなりました。セミナーに参加した三浦氏は、「Microsoft 365 の最新機能も学ぶことができて有益でした。プレミアム感もありました」と話します。

大野氏は、スキルアップとあわせて、もう一つの“学び”も目的としていました。「DX プロには、単に研修生として参加するのではなく、Microsoft Unified 担当者の“教え方”をよく見て真似るように伝えました。Microsoft Unified にも、“教えるスキル”を身に付けさせたいという相談をしていました」

JR 東日本の要望を受け、Microsoft Unified はスキル トレーニングだけでなく、「DX とは何か」といった本質を考えるなど、意識レベルの変化をもたらすチェンジ マネジメントのワークショップを開催。また、すべてのトレーニングにおいて DX プロが教える立場として、とるべき意識やふるまいに関してアドバイスしました。さらに演習問題に加え、さまざまな職場の実課題を持ち寄り、課題解決のコーチング・ワークショップにより実践力を身に付ける機会も提供しました。

DX 推進エバンジェリスト向けに実施した AI アイデアソン、ハッカソンでは、DX プロがメンターとして補助をおこないました。DX プロからは「自分たちでもできるという自信が持てた」と研修成果を実感する声が上がってきました。安藤氏は、「アイデアソン、ハッカソンは非常に楽しかったです。その経験から、自分たちが講師としてアイデアソンやハッカソンを企画する際のポイントは、“楽しい”という気持ちを持ってもらうことです。楽しくないと続かないという実感を持ちました」と話します。

内製化によるアプリ開発と業務に最適化するカスタマイズの両方が大切

JR 東日本におけるデジタル人材育成では、従業員コミュニケーション プラットフォーム Microsoft Viva Engage の活用にも力を入れています。その中のコミュニティの一つ「Oh!!365 通信」を管理している鳥羽氏は「Microsoft 365 を使いこなすことで業務効率につながるという思いがあり、使い方や、知って得する情報などの発信を続けています。2019 年に第 1 号の投稿を開始してから現在 179 号(2025 年 1 月時点 )まで続いています。私が持っている情報を他の社員に役立ててもらうために、その他のさまざまなコミュニティでも活発に投稿しています」と話します。

DX を広げるうえで、DX プロの活動で作成したアプリの横展開は重要なポイントとなります。「Viva Engage で、他の職場が作ったアプリが紹介されており、『どうやって作ったのか』など、DX プロはもとより社員同士の交流も広がっています。また内製化によるアプリ開発を牽引しているのが、Power Platform を使いこなす達人たちの存在です」(大野氏)

全社で利用されている内製化されたアプリの活用が DX の裾野を拡大しています。代表的な内製化アプリの 1 つが、安部氏が開発した物品転活用アプリです。ある部署で不要になったテーブルや椅子などの物品と、必要とする部署をマッチング。コスト削減や環境保護の観点から全社で利用されています。また、従来購入していたシステムを、自分たちでアプリ開発することでコスト削減を図った事例として、三浦氏が開発した座席管理アプリがあります。フリーアドレスでは、誰がどこに座っているのかを管理できないという課題がありました。しかし、今では PC の電源を入れるとアプリが立ち上がり、簡単な操作で座席が登録できるようになったため、どこで仕事をしているかが一目瞭然になりました。

「業務改善の観点では、内製化によるアプリ開発と、他職場で作成したアプリをカスタマイズして取り入れる両方の視点が大切です」と鳥羽氏は強調します。秋田支社では、他職場で作成したアプリを、自分たちの業務に合わせてカスタマイズし利用するための勉強会にも力を入れています。また横浜支社では、乗務員の乗務報告アプリ、統括センターでの業務引き継ぎアプリなど職場で作成したアプリの情報収集と展開を実施。同支社の DX 推進エバンジェリスト会議においてアプリの事例発表をおこなうなど、普及拡大を図っています。飯山氏は「電子マネーが誰にとっても当たり前になったように、横浜支社の全員が Power Platform を使える状態にしたい」と DX プロとしての抱負を述べます。

活動 2 年目となる DX プロは、さらなる成果が求められます。「Microsoft Unified には、DX プロの活動をステップアップする一歩先の提案を期待しています。“教えるスキル”を高めるために、マイクロソフトの知見やノウハウをもとに、これからもアドバイスをしてもらいたいと思います」(鳥羽氏)

今後の展望について大野氏は話します。「2027 年度を達成目標としたデジタル人材育成の KPI は DX プロの活躍により、計画より早いスピードで取り組みが進んでいます。次はさらに Microsoft 365 による改善成果をレベルアップさせていく段階に入ります。デジタルベーシック人材は、日常業務で Microsoft 365 Copilot などの生成 AI サービス を業務に活かせるようにすることが重要テーマとなります。日々進歩するテクノロジーを身につけるのは簡単ではありません。新たなデジタル ツールを素早く全社に浸透させていくには、DX プロそして DX 推進エバンジェリストという”仕組み”が活きてきます。これからも Microsoft Unified の教え方を真似するという姿勢は変わりません。マイクロソフトには知見やノウハウの提供を期待しています。またデジタル ミドル人材は、詳細なスキルレベルを定義し、能力を持つ社員を可視化していきます。そして、能力を持つ社員が DX プロに頼らなくても自職場や隣接職場の課題をデジタルで解決していく状態を目指したいと思います。DX 推進は業務効率化だけでなく、『社員の成長や、仕事を楽しくするための職場づくりにつながっている』といった声をさまざまな職場の管理者から聞く機会も増えました。今後も活力ある職場づくりに貢献していきたいと思います」

JR 東日本全社員をデジタル人材に育て成長を促す DX プロ。Microsoft Unified は寄り添いながら、その活躍を支援していきます。

大野 誠一郎 氏, イノベーション戦略本部、デジタルストラテジー推進ユニット、マネージャー, 東日本旅客鉄道株式会社

“DX プロには、単に研修生として参加するのではなく、Microsoft Unified 担当者の“教え方”をよく見て真似るように伝えました。Microsoft Unified にも、“教えるスキル”を身に付けさせたいという相談をしていました”

大野 誠一郎 氏, イノベーション戦略本部、デジタルストラテジー推進ユニット、マネージャー, 東日本旅客鉄道株式会社

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